昨年2017年12月25日に初会合が持たれて以来、6回を重ねた総務省「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」ですが、約4カ月の期間をかけて、モバイル通信環境に関する諸問題について検討・検証が行われました。

  • 第1回・・・2017年12月25日
  • 第2回・・・2018年1月15日
  • 第3回・・・2018年1月22日
  • 第4回・・・2018年1月30日
  • 第5回・・・2018年4月9日
  • 第6回・・・2018年4月20日

 

今回は、「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会(以下 検討会)」で話し合われた内容と、その中でもユーザーとして気になる、いわゆる「サブブランド潰し」について経緯と結論を追ってみたいと思います。

果たして、サブブランド問題に対して総務省と検討会はどのような結論を出したのでしょうか。

 

検討会で話し合われた内容について

 

検討会で主に話し合われた問題は以下の3点です。

1.ネットワーク提供条件の同等性確保について

大手キャリアとその関連会社がシェア9割を占める寡占状態にあって、多様なサービスが低廉な料金で提供されるためには適切な競争環境が必要であり、そのためには、MVNOがMNOと同等のサービスを提供できる事が必要…との前提に立って、料金・品質(速度)や、接続料金、MNPの円滑化、音声卸料金、テザリング、緊急通報など様々な要素について検討が行われました。

2.中古端末の国内流通促進

利用者の端末や端末購入先の選択肢を拡大させ、通信サービスでの競争を促進させるためには、中古端末の国内流通が活発化しなければならない。

しかし現状、諸外国に比べて国内の中古端末の供給量が少ない点を指摘、検討が行われました。

3.利用者の自由なサービス・端末洗濯の促進

利用期間拘束~いわゆる「2年縛り」や「自動更新」の契約制度や、利用者の利用実態に応じた適切なサービス選択、適正な広告表示の確保等が話し合われ、特に大手の2年縛り明けの対応や、積極的なサービスの紹介や説明の必要性などが検討されました。

 

この中で、筆者が特に注目したのは以下の内容です。

  • サブブランド潰しに対してどのような結論が出たのか

SoftbankのサブブランドであるY!mobileと、KDDIグループのMVNOで、auのサブブランド的な役割を担っているとされるUQmobileに関して、検討会に参加したMVNOから、接続料金等の不公平があり、それが原因で通信速度が勝っているのではないか…という意見が出されていました。

特に、同じMVNOであるUQmobileに対しての風当たりが厳しい中、KDDIもUQコミュニケーションズ(UQmobile運営会社)も反論する等、議論がおこなわれました。

 

大手キャリアよりも割安な料金で、快適な通信速度を提供しているUQmobileはユーザーからみれば非常にコストパフォーマンスの高い選択肢ですが、これに対して総務省がどのような判断するのか注目していました。

もし、公平という名のもとに安易に制限や規制を行ってユーザー利益が失われれば、いったい何のための、誰のための検討会だかわからなくなってしまいます。

実際に不公平があるのであれば論外ですが、そうでないのに他社よりも通信速度が速い事が不公平に当たるので規制すべきだ等の結論が出ないか、非常に心配していました。

 

  • 大手キャリア2年縛りの更新時のユーザーの不利益

端末購入を前提とした場合、大手キャリアのいわゆる2年縛りプラン+端末24回分割支払いの制度は、非常に割安でお得感のある仕組みです。

多額の端末購入サポート(割引)によって、端末購入のユーザー負担は大きく軽減されることから、多くの利用者が2年契約を結んでいます。

しかし、2年契約満了を以ってMVNOへ乗り換えようとした場合、契約期間最終月(24か月目)までの解約・MNP転出には違約金がかかり、更新月(25・26か月目)には違約金はかからないものの、その月のプラン料金が発生してしまい、実質的には2年以上の料金的縛りを受けている事になります。

 

こうした2年縛り問題に対して、総務省や検討会がどのような方針を打ち出すのか注目していました。

 

サブブランドの公平性に関する検討の経緯

 

第2回検討会において、参加したMVNO各社からサブブランドの通信速度や料金が不公平であるという意見が出されました(参加MVNO:IIJ・楽天モバイル・ケイオプティコムmineo)。

 

IIJのサブブランドに関する意見(第2回検討会)

サブブランド(グループ内MVNO含む)は、移動体通信市場の競争を促進し、引いては消費者の利益に繋がるので基本的には歓迎するが、健全な競争の実現のためには、競争条件の平等性の確保が重要であると考える。

また、大手キャリアのユーザーの囲い込みを目的としたサービスやプロモーションが行われている…と指摘しました。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000526899.pdf

 

楽天モバイルのサブブランドに関する意見(第2回検討会)

まず楽天モバイルが指摘したのは店舗の問題でした。

サブブランド(グループ内MVNO含む)の店舗のうち約半数は、メインブランドとの併設店であり、いち早く良いロケーションで店舗展開している事は不公平としました。

また、2年縛り+自動更新の仕組みや、契約解除料(いわゆる違約金)の存在がMVNOへの移行の障害となっている事に加え、端末の48カ月割賦や、機種変更時の下取りや残債免除を組合わせた複雑な仕組みが登場しており、これが新たな利用者を拘束している結果になっていないか等の懸念を表明しました。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000526900.pdf

 

ケイオプティコム(mineo)のサブブランドに関する意見(第2回検討会)

サブブランド(グループ内MVNO含む~以下同様)が、格安スマホ並みの低料金に加え、常時高速な通信サービスを提供しており、MVNOとの料金差は縮小する一方で、通信速度の差は顕著で、競争上MVNOが劣後する状況になっていると指摘しました。

また、サブブランドは通信混雑時でも高速安定しているが、MVNOは速度低下を起こし大きな速度差が生じており、サブブランドと同等の通信速度を確保するためには、きわめて高額な利用料が必要となるという結果が試算によって得られたとしました。

現状、MVNOと同等料金で常時・高速サービスを提供できるのは何故なのかを検証すべきとしました。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000527202.pdf

 

第2回検討会まとめ

上記3社の意見と共に、検討会に参加していないMVNO事業者向けに事務局が実施したアンケート結果も示され、その中でもやはり、サブブランドと関連MVNOの割安な料金と常時高速な通信速度への検証が必要と考えるMVNOが多い事が報告されました。

第2回検討会では、まずはサブブランドに不満を持つMVNO側の意見や検証結果を聴取したかたちです。

総務省としては、大手キャリアの寡占状態により高止まりしている料金の低廉化などを目論んでMVNOを支援してきましたが、ここへ来て、大手キャリアの新プラン導入や、サブブランドの強化・伸長によりMVNOの勢いに陰りが見える中、必要な対策を打つべくMVNOの不平不満を聞いた…という印象です。

 

KDDIの反論(第3回検討会)

第2回の検討会で、MVNO3社ならびにアンケートでも検証が必要とされた点について反論しました。

冒頭で、接続料の公平性について述べ、「ルールに基づき算定し、MVNOに同条件で提供している」点を強調、さらにその水準が低減傾向(安くなっている)にあるとしました。

指摘を受けているグループ内MVNO~UQmobileに関しても「One of Them ワン・オブ・ゼム」であるとしました。

また、卸金額については総務省に対して金額や契約内容も含めて届出て検証を受けている事なので、金額に相違がない事は総務省が認めている処である事も申し添えました。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000528157.pdf

 

UQmobileの反論(第3回検討会)

同じMVNOでありながら大手キャリアグループ会社という事で優遇を受けているのではないかとの矢面に立ったUQmobileは、まず、UQmobileのシェアは格安SIM・サブブランドとして突出している訳ではない事、プラン料金は初年の割引を含めてもMVNO他社よりも割高な設定になっている事などを述べた上で、第2回会合でケイオプティコムが試算の元となっている前提条件が誤っている事なども指摘しました。

さらに、WiMAXを提供するMNOとして快適な通信速度を提供する事を重視しており、MVNOスマートフォン利用者に対しても同様に重要なファクターと考えるため、一定の通信速度を確保するのはUQmobileのポリシーであるとしました。

さらに、回線の借り受けに関して何らかの優遇があるのではないかとの指摘に対しては、月額1,000円以下の格安SIMよりは割高な料金設定で収益を確保して快適な通信環境を提供している事、TVCMや店舗展開にかかるコストは、自社経営の中で適切に負担していると述べ、不公正はなく、他社より割高な料金や社内の資金を適切に配分しての事であると明確に反論しました。

 

第3回検討会まとめ

前回検討会とは逆に、今回は大手キャリアやサブブランド、グループMVNOの意見を聞きとりました。

当然のことながら、キャリアやサブブランドは反論しますし、その反論にも裏付けがある印象で、特に回線の貸出料金については「検証を受けているので、公平なのは総務省が知っているでしょう?」という反論は総務省側が否定できないものがあったように感じます。

また、UQmobileに関しては、WiMAXの回線を保有するMNOである事が大きいように思います。

各社が高速通信を目指す中で、WiMAX回線についてはUQが貸し出す側で、auが借りる側の立場で、キャリア・アグリゲーションを実施しているため、当然、その分の収益がある訳で、それをTVCMた店舗展開に使っている事を外部からとやかく言われる事ではない…という反論はもっともな言い分に感じました。

 

第3回検討会での追加質問に対するKDDIの回答(第4回検討会)

第3回検討会において、KDDIに向けた追加質問にKDDIが回答しました。

その中で、サブブランド関連としては、「関連MVNO・サブブランドとMVNOとの間の同等性について」として、「ユーザー数と、一定のスループット(処理能力)を確保するために必要な帯域幅の関係性について、何らかのデータや知見があれば教えて欲しい」との要望に対してKDDIは以下のように回答しています。

一般的に、データ通信においては、輻輳時に再送が発生すると連鎖反応的にさらなる歳層が生じるため、急速に通信速度が低下します

従って、基本的に再送が起きないように。ピーク時のユーザー数と利用データ量を踏まえて帯域幅を設計する必要があります』引用:いずれもhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000529985.pdf

と回答しています。

これはつまり、速度低下させないための方法を教えてくれ…との質問に、最大時に見込まれるデータ量に対して余裕のある帯域幅を用意すればいいんですよ」と回答している訳で、これはかなり辛辣な回答に感じました。

言っている事は確かに左様な内容ですが、MVNO側からすればそれができないから困っているんだけど…という事になり、速度低下の原因は回線を貸し出す方ではないし、速度が出せているUQはそれだけの帯域幅を確保しているんですよ…という厳しい回答でした。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000529985.pdf

 

第3回検討会での追加質問に対するUQmobileの回答(第4回検討会)

「キャリア・アグリゲーションのためのauへのWiMAXの卸販売数を背景にした、MVNOへの接続交渉上の優位性はあるか?」という第3回検討会での指摘に対して、UQコミュニケーションズが回答しました。

WiMax回線を使ってのキャリア・アグリゲーションは、UQが貸出したWiMax回線2.5GHz帯とauLTE(800MHZ/2.1GHz/3.5GHz)帯を合わせて、au利用者及び、au回線MVNO利用者に提供しているもので、MVNOとの提供条件の交渉はauが直接当たっているため、UQは介在していない旨を報告しました。

auがWiMAX回線も束ねて提供するキャリア・アグリゲーションは、UQmobileもMVNOとして借り受ける立場にあるため、その回線利用者のシェアはauのものであり、UQに帰属するものではないという主張です。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000529984.pdf

 

第3回検討会での追加質問に対するSoftbankの回答(第4回検討会)

KDDIへの追加質問と同内容の「ユーザー数と、一定のスループット(処理能力)を確保するために必要な帯域幅の関係性について、何らかのデータや知見があれば教えて欲しい」に対して回答しています。

一般論といたしまして、データ通信においては、接続ユーザ数と利用データ量に応じた必要な帯域が確保されない場合、輻輳により、遅延やパケットロスが発生すると共に、データの送受に失敗した場合に再送要求が繰り返されます。

この結果として、ネットワーク上でのスループット低下という現象が生じ、一定のネットワーク品 質を保つことが困難となる(例:昼間等に急速に速度が落ちる)事象が起こり得るものと 考えます。

引用:いずれもhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000529983.pdf

 

回答の内容はほぼKDDIのものと同じです。

つまり、輻輳時(集中混雑時)には遅延やパケットロスが発生、データの送受に失敗した場合には再送が繰り返される結果、スループット(処理能力)の低下が起こりネットワーク品質を保てなくなる…と言うものです。

解決策は具体的には示していませんが、当然、ピーク時でも余裕をもった帯域幅を準備する事が解決策である事は自明の理です。

 

http://www.soumu.go.jp/main_content/000529983.pdf

 

モバイル市場の公正競争促進に関する検討会が出した結論とは

 

第4回までの意見聴取などを終え、第5回には「モバイル市場の公正競争促進に関する論点」がまとめられ、続く第6回には「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会 報告書」がまとめられ、4か月間に渡った検討会は、一応の決着を見る事となりました。

 

モバイル市場の公正競争促進に関する検討会 報告書

報告書の冒頭では、

1.これまで、モバイル市場における事業者間の公正な競争を促進し、利用者の利益向上を目的として、MNO・MVNO・中古端末業者・消費者団体・販売代理店等の意見を聞き、MVNOへのアンケートも実施する等して、モバイル市場の公正競争促進に関する課題について意見を聴取した事

2.ヒアリング等で指摘された事項について議論を行い、通信料金の適正化やサービス改善に向けて

(1)ネットワーク提供条件に同一性の確保(みな同じ料金・条件で回線を利用できること)

(2)中古端末の国内流通の促進

(3)利用者の自由なサービス選択の促進

の3つを柱に、モバイル市場の公正競争の促進を図るための措置や検討課題を取りまとめる事ができた。

旨が記載され、個別の課題について報告が行われています。

本項の主旨であるサブブランド問題については、楽天モバイル・ケイオプティコム等から提出された資料によって、現状のサブブランド系は料金はほぼ同等にも関わらず、通信速度は他社MVNOより高速である事に疑問を持つ事、MVNOと同等の条件で提供されているかを検証すべきとしました。

 

これに対し、大手キャリアからは、回線の提供はサブブランドもグループMVNOも含め、全て同一条件で提供している事や、UQmobileからは、MVNOより割高な料金によって帯域を確保している事や、一定の通信速度を維持する事はポリシーである旨等が報告されました。

また、大手キャリアからは、通信速度はMNO側の提供条件だけでなく、MVNO側の設備や、接続点における帯域幅等の要因で変化するとしました。

 

報告書では、回線の貸出条件がサブブランド系もMVNOも同じ条件である事をある事や、通信速度の差が一概にMNO側の提供条件だけの問題ではない事も認めた上で、なおかつ、サブブランド系に対するサービスの提供条件が適正な水準にあるのか、また、グループ内での過度の金銭的優遇(ミルク補給)があるのあか等は、十分な検証が行われていないとしました。

その上で、MNOのサブブランドやグループMVNOに対するサービス提供について、不当な差別的取り扱いや競争を阻害するような行為が行われていないか、MNO3社に対して検証を行うこととし、会計の専門家を含めた検討の必要があるとしました。

 

モバイル市場の公正競争促進に関する検討会 まとめ

 

総務省、並びに楽天モバイルやケイオプティコムが狙った、不当な優遇があるために同等料金でありながら、通信速度が速いのは不公平である、大手キャリアからの優遇があるからこそ、TVCMを膨大に流し、店舗展開も積極的に行えているのだ…という着地点には至る事ができなかったようです。

 

サブブランドであるY!mobileは別として、同じMVNOでありながらダントツの通信速度を維持するUQmobileは、他のMVNOから見れば厄介な存在です。

できれば、今回の検討会で不公平である事が実証され、何らかの規制等が実施される事が望ましかったのでしょうが、残念ながらそうはなりませんでした。

もちろん、回線賃料に差があるのであれば問題ですが、もし、提供条件は同一でありグループ会社だからと不公平な優遇は行われていない前提に立てば、総務省が単に不公平という事だけで何らかの規制を設ける事は、利用者にとって有益なサービスを潰してしまう事になり兼ねない点を杞憂しています。

 

今回の検討会では、一応、不公平な提供条件の違いは認められませんでしたし、KDDIやUQmobileの言い分も筋が通っているように感じましたが、今後の検証の中でいつ何時、この問題が再燃するとも限らないので、注視してゆきたいと思います。

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