総務省による2018年度第3四半期の集計によれば、現在、国内のMVNOの事業者数は、一次MVNO・二次MVNO合わせて962事業者です。

1つの国の中に、回線を保有するいわゆる大手キャリアが3社と、大手キャリアから回線を借り受けて通信サービスを提供しているMVNOが962社存在すると言う事です。

MVNOとは

Mobile Virtual Network Operatorの略で、「仮想移動体通信事業者」と言う意味です。

「仮想」=自前で回線を保有していない、「移動体」=携帯やスマホ、「通信事業者」=通信サービスを提供している事業者ということで、大手キャリア3社から回線を借り受けて、スマホ向けの通信サービスを提供している事業者、及び、そのサービスを表します。これに対し、自前の回線を保有するNTTドコモ・au・SoftbankをMNO(Mobile Network Operator)と言います。

こちらは、総務省の2018年度第3四半期の集計内の資料ですが、962社のMVNOのうち、3万回線以上の契約数を得ているのは、一次・二次合わせて64社あるとされていますが、この「3万回線」という保有契約数は特に優れたものではありません。

例えば代表的なMVNOであるmineo(マイネオ)は、2018年3月を目途に「100万回線獲得」と「経営の黒字化」をめざしていました。

「100万回線」については、予定より少し遅れて同年4月中には達成できましたが、黒字化は叶いませんでした。

つまり、100万回線分の契約数を保有しても、現在のMVNOが黒字化する事は珍しく、総務省の「3万回線」保有とそうでない事業者の区分けは、決して、事業内容が良好かそうでないかの違いではないという事です。

こちらは、MVNOの保有回線数シェアTOP5です。

この集計時点の「SIMカード型MVNOサービス」の契約数は1,198万回線ですので、シェア比率に基づいて割り振ると、1位:楽天モバイル=192万回線、2位:IIJ=173万回線、3位:NTTコミュニケーションズ=140万回線、4位:ケイ・オプティコム=125万回線、5位:BIGLOBEモバイル=63万回線となります。

mineoの事例を見ても分かるように、100万回線を超えるシェア上位5社の契約数であっても、各社とも余裕はないと言われており、MVNOの経営は非常に厳しいとされています。

MVNOが黒字化できない原因について

MVNOがなかなか黒字化できない原因については様々ですが、1つには大手キャリアから回線を借り受ける料金「接続料」が割高である事が大きく、「接続料」の見直しについて、mineoや楽天モバイルなどが、総務省等の会合等で訴え続けてきました。

何社ものMVNOが、大手キャリアの回線を使用した格安通信サービスを提供していますが、実は、大手キャリア3社の回線貸出料金(接続料)はまったく金額が異なります。

こちらは、平成29年5月31日に総務省が公開した「電気通信市場の分析(中間報告)」内に掲載されている、大手キャリア3社の「接続料」~つまりMVNOが通信回線を借り受けるコストです(単位:円、10Mbps当たり)。

これを使ってちょっと試算をしてみましょう。

先ほど、「SIMカード型MVNOサービス」の契約数と、MVNOのシェアから割り出した回線数によれば、mineoを運営するケイ・オプティコムの契約数は125万回線でした。

この125万回線の利用者全てが、Aタイプ(au回線)の中央値の6GBプランを契約していると仮定すると、mineoの月間収益額は1,580円×125万回線=19億7,500万円になります。

19億7,500万円の50%を使って通信速度の改善を行うとすると、半額9億8千750万円で、au接続料は858,335円/10Mbpsを11,504Mbpsを購入する事ができます。

この新たな回線の借り受けのタイミングを、「1Mbpsを維持できなくなった時点で」と仮定すると、元々借りている帯域は「1Mbps×125万回線=125万Mbps」になり、新たに借り受けた分と合わたmineoの保有帯域は126万1,504Mbpsとなります。

これを、契約数全員125万回線で均等に利用すると、通信速度は1.01Mbpsとなり、9億円のお金をかけても契約数全体で利用する場合は、0.1Mbpsの速度向上しか見込めないわけです。

実際には、収益の半分を回線増強につぎ込む事はできませんし、契約者全員が一斉に通信を行う事は考えにくいので、この試算はあくまで机上の理屈に過ぎません。

しかし、こうして試算してみるとMVNOが通信速度を上げる事はそう簡単な事ではないという事だけは想像がつきます。

少し難しい話しかもしれませんが、それだけ「接続料」がMVNOの大きな負担となっており、MVNOが増速するのは難しい事だと言う事を理解して頂ければと思います。

いまMNVOが取り組む2つのこと

いくら状況が厳しいからと言っても、MVNOの事業を継続して黒字化を目指さなければなりませんが、MVNOの多くが取り組んでいる事が2つあります。

MVNOの取組み~カウントフリー

1つは特定のコンテンツやサービスの通信量を無料化あるいは定額化する「カウントフリー」の導入です。

MVNOは料金が安いのが一番の特徴ですが、昨今では、Instagram、YOUTUBE、TikTokなど、画像や動画のコンテンツが人気で、データ通信量は増加の一途です。

BIGLOBEモバイルは、その名もズバリ「エンタメフリー」オプションとして、動画や音楽配信サービス利用時の通信を定額化し、480円または980円で見放題・聴き放題のカウントフリーを提供して好評です。

LINEモバイルは、カウントフリーの元祖とも言える通信サービスですが、「データフリー」としてLINEやFacebook・Twitter・InstagramのSNSの通信料を無料化しています。

Links Mateは、ゲームに特化したカウントフリーを提供しており、ゲームのプレイ中の通信はもちろん、アプリのDLやアップデートの際の通信も定額化しています。

こうした、他社にない特徴を打ち出す事で他社との差別化を図り、ユーザーを集めようとする動きが1つの流れです。

MVNOの取組み~マルチ・キャリア化

そしてもう1つの動きが、マルチ・キャリア化です。

マルチ・キャリアとは、1社で複数の通信サービスを提供する通信事業者を指します。

少し前までは、1社=1回線サービスが当たり前でしたが、独立系と呼ばれる大手キャリアと資本関係を持たないMVNOが、複数の回線サービスを提供するようになりました。

今回は、このマルチ・キャリアに焦点を当てて、なぜ今マルチ・キャリア化するのか、マルチ・キャリアの事業者・ユーザー双方にもたらすメリット等について考えてみたいと思います。

なぜ、1社に複数回線サービスがあると良いのでしょう?

マルチ・キャリアとは

まず、最初に「マルチ・キャリアとは何ぞや」と言うところから話しを始めてみようと思います。

先ほど少し書きましたが、1社の通信事業者が、NTTドコモ・au・Softbankの通信回線の中から、2つあるいは3つの回線のサービスを提供することをマルチ・キャリアと言います。

以下は、現在マルチ・キャリアとして、複数の回線サービスを提供しているMVNOです。

例えば、IIJは、NTTドコモとauの回線サービスを提供しています。

BIGLOBEモバイルは、元々ドコモ回線サービスを提供するシングル・キャリアでしたが、買収されてKDDIグループとなり、au回線サービスも提供するマルチ・キャリアとなりました。

Softbank回線MVNOサービスは2017年から

実は、2017年までSoftbankはMVNOに回線の貸出を行っていなかったため、Softbank回線のMVNOサービスは存在しませんでした。

回線の開始出しに積極的でないSoftbankに「風穴」を開けたのは、日本で最初にMVNO事業を開始した「日本通信」で、長期間の粘り強い交渉の末、ようやくSoftbank回線の借り出しに成功、2017年夏からドコモ回線とSoftbank回線サービスを提供するマルチ・キャリアとなりました。

それ以降、他社MVNOでもSoftbank回線サービスを提供する事業者が増加し、Sony系のNUROmobileは、ドコモ回線とSoftbank回線サービスを提供開始し、mineoは、従来のドコモ回線・au回線に加えてSoftbank回線サービスも提供するトリプル・キャリアと名乗る様になりました

「LINEモバイル」がau回線サービス開始

余談ですが、最近、少し驚いたニュースがありました。

それは、2018年3月にソフトバンクによって買収され、ソフトバンクグループ入りしたLINEモバイルが、2019年上半期中に、au回線サービスの提供を開始するというものです。

BIGLOBEモバイルも、KDDIグループなのにドコモ回線サービスを提供しているじゃないか…と思うかもしれませんが、状況が違います。

BIGLOBEモバイルは、元々ドコモ傘下の企業ではありませんので、KDDIが買収したとしても、NTTとの関係の深さが気になる程度で、特に違和感は感じませんでした。

ところがLINEモバイルは、現在すでにソフトバンクグループであり、Softbank回線サービスも提供している身で、他社グループのau回線サービスを提供するということなのです。

「え、それってアリなの?」と、意表を突かれたという感じで驚きました。

どの大手キャリアとも資本関係のない独立系MVNOであれば、例えばmineoのように3キャリアの回線サービス全てを取扱っても気になりませんが、LINEモバイルの場合は、「ソフトバンクがよく許可したな」という点で驚きましたし興味を持ちました。

マルチ・キャリア化が進む背景

なぜ今、多くのMVNOがマルチ・キャリア化へと進んでいるのでしょうか。

スマホユーザーの意識の変化

1つには、「ユーザーの意識の変化~端末のロングライフ化」があります。

これは日本のみならず世界的な傾向ですが、1台のスマートフォンを長く大切に使うユーザーが増加する傾向にあって、以前は、2年前後での買い替えが一般的でしたが、最近は、3~4年は当たり前、5年以上同じ端末を利用するユーザーも少なくありません

iPhoneで言えば、5年前と言うとiPhone 5sになります。

発売から5年経過した現在でもiPhone 5sを使用している人も珍しくありません。

iPhoneは、iOSを毎年のように更新し、旧端末でもiOSをアップデートする事で最新の機能やセキュリティを反映させる事が可能なため、元々使用期間が長い傾向がありましたが、ここ数年でさらにそれが伸びているようです。

多くのユーザーが、1台の端末を大事に長期間利用する傾向にあります。

スマホの性能・機能は頭打ち

2つ目には、「スマホの機能・性能が頭打ち」で、大幅な伸びしろを期待できないという事があります。

初代iPhoneがこの世に登場して大きなイノベーションを起こしてから、iPhoneはニューモデルで常に新しい驚きと体験を演出してきましたが、徐々に、「やり尽くした」という印象が強くなり、ニューモデルが出ても、飛びつくような画期的な機能や性能を見せてくれなくなっています。

それはAndroidでも同じで、次のイノベーションは、「次世代通信規格:5G」だと言われていますが、5Gでの主役はすでにスマホではないとも言われており、この先も、大きな変革や新たな発見は望めそうにない…、つまり今の端末を使い続けても一緒、買うなら、割安な旧モデルで充分といった風潮になっているように見受けられます。

スマートフォン端末の高額化

3つ目は「スマートフォンの高額化」です。

昨年2018年のiPhone販売は散々でした。

部品サプライヤーとの訴訟合戦に明け暮れ、米中の摩擦によるApple製品のボイコットなど、Appleにとって悪いニュースばかりが続く1年でしたが、何よりも、ユーザーの購買意欲を削いだのは、Apple自身の読み違えによるiPhoneの高額化です。

筆者は、9月に予約開始と同時にiPhone XSを予約購入しましたが、こうした仕事をしていれば「仕事のため」という言い訳ができ、「経費だ」と何とか納得する事ができますが、そうでなければ、スマホに12万円は高すぎます。

使ってみれば、確かにいい端末ですし、何の不満もありませんし、幾つかの機能はXSでなければ得られない体験である事は確かですが、だからと言って、こうした仕事でなかったら、XSの機能・性能と価格が見合っているのかという疑問には、「NO」と答えるはずです。

もし頑張って12万円超の最新iPhoneを購入したらどうなるのか…。

その答えは簡単で、次の買換えがずっと先になるという意味で、最初の「ロングライフ化」に戻るだけです。

ユーザーの意識が、端末のロングライフ化に向かっている中、Apple自身が、iOSを更新し最新機能やセキュリティを旧モデルにも反映させることでロングライフ化を助長しています。

また、新たなモデルを購入しても、目新しい機能・性能が搭載されている訳でもなく、期待値を遥かに上回る高すぎる価格設定…等々、Appleは、自分自身で新しいiPhoneの買い換えサイクルを長期化してしまっています。

Androidは、大元の開発・設計はGoogleが行っていますが、公開された仕様によって数多くのスマホ製造メーカーが独自の端末を生産しているため、Android-OSのバージョンの選択や、アップデートをする・しないまでメーカー任せです。

Androidスマホを製造しているメーカーはたくさんあるため、特徴や性能の競争も激しく、当然ながら価格面でも激しい競争があり、高性能・高機能の最新モデルを驚く様な割安な価格で発売するため、Androidユーザーは、OSのアップデートを待つより、買いやすい最新モデルを購入する方が手っ取り早い訳です。

もちろん、Androidにもフラッグシップモデル、ハイエンドモデルと呼ばれる端末がありますが、それらはバンバン売れるような性格の商品ではなく、1モデルのロングライフ化と無縁ではありません。

しかし、Androidスマホ製造メーカーは、フラッグシップモデルも作る一方で、性能と価格のバランスがよいミドルレンジモデル、割安で機能を絞ったエントリーモデルなど、豊富なラインナップで幅広い価格帯のモデルを供給しています。

いくらブランドイメージが良く、高品質な端末であっても、ユーザー全てがハイエンドモデルばかりを求めるわけではありません。初級~中級機のニューモデルがないiPhoneが苦戦するのは当然と言え、選択肢に買い求めやすい価格帯のモデルがないなら、現状の手持ち端末を継続的に利用しようと考えるのは当然と言えます。

MVNOがマルチ・キャリア化を目指す訳とは

マルチ・キャリア化するMVNOの狙いは明確です。

「SIMロック解除」です。

正しく言えば、「SIMロック解除せずに利用可能な端末を増やす事」です。

ここまで見てきたように、多くのユーザーが1台の端末を大切に長期間利用する傾向にある事に加え、昨今では面倒な「SIMロック解除」の手続きを避けたいと考えるユーザーが増加しています。

携帯ショップに依頼すれば何時間も待たされたあげく3,000円の手数料を取られますし、WEB上で自ら手続きを行えば無料ですが、リテラシーの低いユーザーには敷居が高く感じられます。

誰でも、「SIMロック解除」など、しなくて良いものなら、余計な手間とお金をかけたくないのは当然です。

そうした、「SIMロック解除」をしたくないユーザーを、取り込む方法として、マルチ・キャリア化は大きな効果を持っています。

NTTドコモで購入した端末はドコモ回線であればSIMロック不要で利用できます。

auで購入のスマホはau回線で、Softbankで購入したスマホはSoftbank回線で利用する場合はSIMロック解除が不要です。

つまり、1社の回線サービスよりも2社、2社の回線サービスより3社の回線サービスを提供している方が、SIMロック解除を嫌うユーザーを受け入れられる間口が広いと言う事になります。

これが、MVNOがマルチ・キャリアを目指す最大の理由であり、面倒な手続きを嫌うユーザーの希望を汲む事になる訳です。

通信会社内での回線変更もメリットの1つ

例えば転居などで、今まではNTTドコモ回線を使用していたが、転居先ではドコモ回線は圏外になってしまったという場合でも、マルチ・キャリアであれば、他社へMNPしなくても、簡単な手続きで回線を切り替える事ができます

同一キャリア内で回線の切換え(タイプ変更)が可能なのは、「IIJ」「mineo」「BIGLOBEモバイル」「LINEモバイル」です。

他の「楽天モバイル」「NUROモバイル」「QTモバイル」「イオンモバイル」「ロケットモバイル」「日本通信」は、キャリア内での回線切換え(タイプ変更)はできません。

「QTモバイル」「イオンモバイル」については、解約→新規で同じキャリアを利用する事は可能と記載されています。

 

MVNOのマルチ・キャリア化まとめ

すでに述べたように、MVNOは決して経営が楽ではありません。

「接続料」が高いという理由もありますが、MVNO同士の料金競争も過熱していて、余裕を持った収益を得られるような料金設定が難しいという側面もあります。

そんな中で、MVNOが見出した他社との差別化の方策が、「カウントフリー」と「マルチ・キャリア化」だと言えます。

「カウントフリー」は支払料金を減らす効果があり、「マルチ・キャリア」は入口の敷居を下げる効果があります。

ユーザーにとっても、料金は安ければ安い程良い訳ですし、SIMロック解除不要で利用中のスマホをそのまま使える事は大きなメリットになりますので、MVNOを選ぶ際には、自分に合った「カウントフリー」サービスの有無と、複数回線サービスを提供しているマルチ・キャリアを選ぶのも1つの選択肢ではないかと思います。

コメント

アバター


ピックアップ記事


Fatal error: Uncaught Error: Call to undefined function related_posts() in /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/wp-content/themes/network/single_blog.php:227 Stack trace: #0 /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/wp-content/themes/network/single.php(12): require_once() #1 /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/wp-includes/template-loader.php(98): include('/home/mahito/ne...') #2 /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/wp-blog-header.php(19): require_once('/home/mahito/ne...') #3 /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/index.php(17): require('/home/mahito/ne...') #4 {main} thrown in /home/mahito/network-fantasia.jp/public_html/wp-content/themes/network/single_blog.php on line 227